「腕や二の腕を上げると痛い……」「寝ている間も肩が痛む……」
このような症状がある方は、腱板断裂(けんばんだんれつ)を起こしているかもしれません。
この記事では、肩関節の痛みの原因となる腱板断裂について、症状や原因、治療法などを解説します。
■腱板断裂とは?
腱板断裂とは、肩関節を支える筋肉である「腱板」が切れてしまった状態です。
腱板とは、肩関節のインナーマッスルのことであり、棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)、小円筋(しょうえんきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)の4つで構成されています。
肩関節は、背中にある肩甲骨(けんこうこつ)と、腕の骨である上腕骨(じょうわんこつ)が繋がってできています。
腱板は、この2つの骨を繋ぐ役割を果たしており、腕を上げたり回したりするのに欠かせない筋肉なのです。
腱板が切れてしまうことにより、肩関節を動かす際に痛みが出てしまう方もいます。
また、関節が不安定になり、力が入らなくなってしまう方もいます。
■腱板断裂の症状
腱板断裂の主な症状は以下の通りです。
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腕を動かすと肩に痛みが出る
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腕が上がらない
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夜中に肩が痛くて眠れない
初期は肩の痛みや動かしにくさを感じますが、悪化すると痛みで眠れなくなる場合もあります。
腱板は4つの筋肉で構成されているため、どれか1つの筋肉が切れていても腕を上げられる場合もあります。
そのため、四十肩や五十肩と勘違いし、放置してしまう方もいるのです。
■腱板断裂の原因
腱板断裂になる原因ははっきりとわかっていません。
しかし、肩関節の使い過ぎや、老化による腱板の劣化が原因のひとつとされています。
また、野球などでボールを投げる動作を日頃からたくさんする方は、腱板を部分的に断裂する場合があります。
■腱板断裂の検査方法
腱板断裂はレントゲンやMRIを使用して診断します。
レントゲンだけでは判断するのが難しいのですが、MRIを撮影すると、腱板が切れているのがはっきり写る場合もあります。
なお、四十肩や五十肩と判別するために、整形外科では以下のポイントをチェックします。
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腕の上がり具合
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腕を上げたときに「パキパキ」と音が鳴るか
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腱板の筋肉が著しく痩せていないか
四十肩や五十肩と判別を誤ってしまうと、治療を進めていくうちにどんどん悪化してしまうこともあります。
明らかに腕の上がりが悪い方や、痛みが出てからの期間、腱板の筋肉の状態などを確認するため、専門的な知識と経験をもとに検査する必要があるのです。
■腱板断裂の治療法
腱板断裂の治療方法には以下があります。
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保存療法
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手術
それぞれ詳しく見ていきましょう。
◎保存療法
保存療法で治療を行う場合、まずは一定期間、肩関節を安静に保ちます。
三角巾やバンドなどを使用し、腕を動かさない状態を作ることで、痛みを緩和することが可能です。
夜間痛が強い場合は痛み止めの注射を使用します。
また、関節の中にヒアルロン酸を注射し、炎症を抑える手助けをする場合もあります。
痛みが落ち着いてきたら、少しずつ運動を始め、肩関節の動きを改善していきます。
保存療法では切れた腱板をもとに戻せませんが、筋力をつけたり動かし方を学んだりすることで、日常生活に必要な動きを獲得できる場合もあります。
◎手術
保存療法での治療が難しい場合、手術を選択します。
腱板を繋ぎ合わせる手術を行い、関節の機能回復と痛みの除去を図ります。
手術方法は内視鏡で行う方法と筋肉を切り開いて行う方法の2種類です。
腱板の状態や患者さんの希望に合わせて方法を選択します。
高齢者にはリバース型の肩人工関節置換術を行う場合もあります。
手術後はしばらく安静にしたのち、リハビリテーションで少しずつ肩を動かしていきます。
術後の運動の初期は痛みを伴いますが、徐々に回復していきます。
■腱板断裂は自然に治る?
四十肩や五十肩は自然と治る場合がありますが、腱板断裂では筋肉が切れてしまっているため、自然に治ることは難しいです。
保存療法で治療を進め、痛みがなくなったとしても、内部の筋肉は切れたままです。
中には痛みや動かしにくさを放置してしまい、腕が全く上がらなくなってから受診される方もいます。
正しい治療方法を選択するためにも、痛みや腕の上がりにくさを感じた場合は、早めに整形外科で検査を受けるようにしましょう。
■「腱板断裂かも?」お早めに整形外科へ
腱板断裂が疑われる場合、早めに治療を行わなければ、腕が上がらなくなってしまう場合があります。
日常生活に大きな支障が出てしまう可能性もあるため、痛みや違和感が出たら放置せず、すみやかに整形外科を受診するようにしましょう。
『宮島整形外科クリニック』では、腱板断裂の検査と診断、治療のアドバイスなどを提供しております。
肩関節の不調を感じている方は、お早めにご相談ください。