急性腰痛症
腰の痛みを引き起こす疾患は「腰痛症」と総称で呼ばれます。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などさまざまな原因が考えられ、骨へのがん転移や細菌感染など、命にかかわる危険な疾患のリスクもあります。また、身体の負担や内科的疾患だけでなく、運動不足や肥満、さらにストレス・不安・うつといった心理的要因で発症するケースもあります。症状、原因ともに複雑で自己判断は難しいので、痛みや違和感がある場合はまず医師に相談されることをお勧めします。
急性腰椎症(ぎっくり腰)
急性腰椎症は、腰に急激な痛みが突然現れる、いわゆるぎっくり腰のことです。悪い姿勢による腰の筋肉疲労や、重い物を急に持ち上げるなど腰に負担をかけた場合に起こります。数日で次第に痛みが軽くなっていくことが多いです。
慢性腰痛症
長時間のデスクワークや同じ姿勢での作業、前かがみ状態での家事や介護、スポーツなどにより腰に負担がかかると筋肉が硬くなります。それでも負担をかけ続けると、やがて筋肉や筋膜が損傷して炎症を起こし、血行が悪化することで腰痛が生じます。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症に伴う腰痛なら、MRIやレントゲンなどの画像検査で原因の特定が可能ですが、筋肉・筋膜が原因の筋・筋膜性腰痛は画像検査では異常が見つけられません。改善するためには、医師や理学療法士の指導のもと運動やストレッチを行い、弱っている筋肉を鍛えることが大切です。
腰部脊柱管狭窄症
中高年に発症しやすい疾患で、加齢などにより劣化した椎間板と、背骨や椎間関節にできたでっぱり(骨棘)が神経を圧迫して発症します。安静にしている限りほとんど症状はありませんが、背筋を伸ばして立ったり歩いたりすると、太ももや膝から下にしびれ、痛みが生じます。ただし、痛みはそれほど強くなく、前かがみになったり腰掛けたりすると和らぎます。
腰椎椎間板ヘルニア
背骨をつなぐクッションの役割を果たしている椎間版が、変性、断裂して一部が飛び出し、神経を圧迫している状態です。長時間のデスクワークやスポーツによる負担の他、物を持ち上げる、体をねじるといった日常動作がきっかけで発症することもあります。腰や臀部に痛みが生じ、足がしびれたり、足に力が入りにくくなったりします。背骨が曲がって動きにくくなり、重い物を持つと痛みが強くなることもあります。
変形性腰椎症
加齢に伴って椎間板が劣化し、弾力性がなくなると椎間にトゲのようなでっぱり(骨棘)ができます。このトゲが神経を圧迫したり刺激したりすることで痛みが引き起こされる症状です。足のしびれや冷感の他、腰から臀部にかけて広範囲の痛みが生じます。悪化すると脊柱管狭窄症に進行するリスクがあります。
腰椎圧迫骨折
圧迫骨折には、骨粗しょう症に起因するものと、強い外力が加わることによる外傷性椎体骨折、さらに転移性骨腫瘍による病的椎体骨折があります。骨粗しょう症が原因の場合は、外傷がないか、もしくは非常に軽微な外力でいつのまにか骨折しているというケースが多く見られます。また、外傷性椎体骨折は、転落や転倒して尻もちをつくなどの強い外力が加わり発生し、骨折した部位に痛みが生じます。一方、転移性骨腫瘍による場合は、体動時痛だけではなく、夜間の安静時などでも痛むのが特徴です。